技術紹介
独立行政法人 産業技術総合研究所
関西産学官連携センター 元 知的機能連携研究体長
富田文明
(画像処理、コンピュータビジョン、知能ロボット等の研究に従事)
ロボットの自律行動と眼
知能ロボットの研究、特に画像による視覚認識の研究に携わって20年以上になる。研究をはじめた当初は非常に高価なコンピュータを使って、今とは比べ物にならないレベルでの画像処理を行う程度のものであった。当時産業用のロボットが使われはじめ、さらにVALといった言語によってプログラミング制御が可能な第2世代といわれるロボットが登場しはじめていた。日本では産業分野でのロボットが急激に普及しロボット大国といわれるまでになっていく端緒であった。当時は産業界のみならず、ロボットが家庭やオフィスといった生活分野まであっという間に普及していくと考えられていた。
今日、21世紀になって、個人がアミューズメントの対象として購入して遊べる様々なロボットまで登場している。展示会レベルではあるが、昨年の愛地球博をはじめとして、様々なロボットが展示され好評を博している。あと少しで、我々が夢に描いたロボットの時代が到来するように感じられる。
ところが実際に動かしている舞台裏を見ると、大半のロボットシステムは、人間がリモコンで制御していたり、あらかじめ決められた手順通りに動いていたりするだけで、ロボット自身は何も考えていない。よくて、床に張られたマークを検出して動作を補正する程度である。このままでは、二足歩行ロボットに家事を手伝ってもらうどころか、犬型ロボットを番犬にすることすら難しい。
ロボットが人間の制御なしに自分で判断する「自律行動」の実現には多くの課題があることが知られている。その中でもロボットの眼―視覚機能の実現が重要と考えている。ロボットによっては、眼以外の様々なセンサが取り付けられていて、一定の柔軟性を持っているものある。しかし人間が利用する大半(80%以上)の情報が視覚情報と言われていることからもわかるように、ロボットが人間と同じように、眼で自分の置かれた環境を把握したり、対象物を見分けて、それがどこにあるか把握したりできなければ、人間の役に立つ自律行動の実現は不可能と考えてよい。